【税・年金・労務を総まとめ】会社設立後の手続き
起業を検討してから、必要書類を用意し多くの手続きを経て、ようやく会社の設立に至った方がほとんどではないでしょうか。
一般的に登記申請が認められれば、設立の手続きが完了したと言えるでしょう。
実をいうと会社は「設立後」にこそ大切な手続きが待っています。
税務関係から社会保険に関する手続きまで迅速に対処する必要があります。
今回は会社設立後に重要な手続きをわかりやすく順序だててお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
会社設立後の手続きスケジュール
会社設立前の準備にかかわるステップ、事業開始までの流れや手続きについては会社設立に必要な手続きとは | 佐野伸太郎税理士事務所で詳しく紹介しています。
ここからは会社設立をした後に必要となる手続きのスケジュールについてご説明します。
金融機関で必要な手続き
会社を設立後、法人名義の銀行口座を用意します。
法人口座の活用により、個人名義の財産と区別して管理でき、適正な会計処理や税務処理を行うことが可能です。
そのため、個人口座開設よりもハードルが高くなるものの、個人的な財産との混同がない証にもなります。
法人口座開設
金融機関によって異なりますが、商業登記簿謄本(登記事項全部証明書)、会社印や代表者の実印とそれぞれの印鑑証明書、定款などの書類が必要になります。
各種書類を用意して金融機関に申込みをし、審査が行われます。
法人口座は審査が厳格なため、開設まで2週間〜1カ月ほどを要します。
年金事務所で必要な手続き
会社設立後に、各種社会保険の加入手続きを年金事務所で行います。
一人社長でも加入義務があります。
健康保険・厚生年金保険新規適用届
健康保険・厚生年金保険の適用に必要な申請書類です。
電子申請、郵送、窓口持参の方法で申請します。
会社設立後(登記完了後)から5日以内の提出が決められています。以下のリンクから必要書類が入手できます。
都道府県税事務所・市区町村役所で必要な手続き
会社を設立すると、法人住民税や法人事業税などの地方税の納付義務が生じます。
法人の所在地によって提出期限や名称がそれぞれ異なる点に注意が必要です。
該当するエリアの税事務所、市区町村などに前もって確認しておきましょう。
また必要になる添付書類についても同様に要確認です。
ほとんどの場合、定款のコピーと登記事項証明書が必要です。
- 東京都の場合 会社設立から15日以内に提出
- それ以外の地域 会社設立から1カ月以内、2カ月以内など地域によって期限が異なる
※本店所在地が23区の場合、都税事務所に提出するだけでよい。
他の地域でも市区町村役所での手続きが不要な場合もあるため、会社所在地の都道府県税事務所に要確認。
税務署で必要な手続き
地方税だけでなく国に税金を納めるのも会社の義務です。
その手続きは会社の所在地(本店)の該当する地域の税務署で行うことになります。
管轄税務署がわからないという場合は、以下のリンクにある国税庁のサイトで検索できます。
管轄地域については国税庁サイトで調べることが可能です。
給与支払事務所等の開設届
会社として社長自身の役員報酬や従業員への給与支払いのために提出するのが給与支払事務所等の開設届です。
開設の事実があった日から1カ月以内が提出期限と決められています。
会社を設立した場合、他にもさまざまな事務手続きが必要です。
現在は給与支払いが無くても、将来を見越してほかの手続きと一緒に提出しておくといいでしょう。
法人設立届
法人設立届とは、新たに会社を設立したことやその概要を税務署に知らせるために提出する書類です。
代表者氏名・住所のほか、事業目的や事業開始年月日などを記載します。
また会社の法人番号も書かなくてはなりません。法人番号とは、1法人1つの13桁の番号が指定されるもので、登記後に国税庁から所在地に郵送などで通知済みです。法人番号は国税庁法人番号公表サイトで検索、閲覧可能です。
法人設立届の提出期限は、会社設立後2カ月以内と決められているので、適宜準備しましょう。
さらに添付書類として定款のコピーが必要です。
青色申告の承認申請
青色申告は、少額減価償却失算の特例が使えたり、事業年度に生じた欠損金を翌期以降10年繰り越しできるなど税務上のメリットが大きいことで知られています。
ただ、これは会社設立日から3カ月以内に提出する必要があります。
仮に提出を忘れてしまうと、初年度は白色申告の選択肢しかなくなります。
法人設立届書などとともに提出することをおすすめします。
- 国税庁:青色申告の承認申請書
源泉徴収で必要な手続き
従業員を雇用したら、基本的に源泉徴収した日の翌月10日の期限で納付しなければならないと決められています。
しかし原則通りでは、毎月納付作業が生じ、大きな負担となってしまいます。
源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書を提出すれば、まとめて年2回の納付で済みます。
ただし対象となるのは、従業員数が常時10人未満の小規模な事業所に限られています。
個人事業主から法人化した場合に必要な手続き
個人事業主として事業を行っていた方が法人化する、いわゆる法人成りするためには各種手続きが必要です。
詳しい内容を下にまとめました。
廃業届 | 個人事業を廃業した旨を届ける個人事業の開業・廃業等届出書を税務署に提出。 提出期限は廃業から1カ月以内。 |
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青色申告の取りやめ届 | 廃業届と同じく税務署に提出。 提出期限は事業廃止の年の翌年3月15日だが、一般的には廃業届と同時に出す場合がほとんど。 |
給与支払事務所等の廃止届 | 個人事業主が従業員を雇用していた場合には廃止届も提出する。 廃止から1カ月以内に給与支払事務所等の所在地の所轄税務署に提出。 |
所得税の予定納税額の減額申請 | 確定申告で一定の所得税を納める納税者が行う予定納税の減額申請。 申請しなければ廃業しても納付の案内が届く場合もある。 不要な前払いを行わないために必要。 |
事業廃止届 | 個人事業主のうち課税事業者が対象。 管轄の税務署に速やかに提出する。 |
個人事業税の事業開始(廃止)等申告 | 地方税である個人事業税を納付していた場合、都道府県税事務所に申告する。 |
従業員を雇った場合に必要な手続きとスケジュール
会社で必要な人材を雇用した場合は、別途手続きを行わなければなりません。
申請先は年金事務所、ハローワーク、税務署など手続きごとに異なります。
※一般的には下記の手続きが必要になります。個別のご相談は社会保険労務士の先生にご相談ください。
年金事務所で必要な手続き
従業員を雇用する場合は、各種社会保険の手続きを行う必要があります。
健康保険・厚生年金保険新規適用届を日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)へ提出します。
雇用から5日以内に提出しなければならないため、迅速な手続きを心がけましょう。
提出方法は電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口持参が認められています。
従業員に扶養者がいる場合
雇用する従業員に配偶者や子どもなど扶養の条件を満たす家族がいる場合は、まず被扶養者になる手続きを行います。
そのため、健康保険被扶養者(異動)届の提出も必要です。
また厚生年金保険の被保険者でなく、健康保険の被扶養者に該当する場合(年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の被扶養者)は国民年金第3号被保険者該当届も合わせて提出します。
このケースでは、被扶養者の収入証明書や住民票などの扶養証明ができる書類の提出が求められます。
60歳以上で退職後すぐに雇用された従業員
退職後、間を空けずに働く60歳以上の従業員を雇用する場合も注意が必要です。
退職後1日の間もなく再雇用された場合は、同時に同日付の資格喪失届の提出が求められます。
就業規則、退職辞令のコピーや「退職日」および「再雇用された日」に関する事業主の証明書などの添付が必要です。
家族の有無や年齢で提出書類が異なりますので、くわしくは日本年金機構のサイトをご確認ください。
- 日本年金機構:被保険者資格取得届
- 第3号被保険者関係届
- 健康保険被扶養者(異動)届
労働基準監督署で必要な手続き
従業員の雇用にあたっては、労働保険の手続きも行う必要が出てきます。
具体的には労災保険や雇用保険の手続きを行います。
労働保険関係成立届
従業員を1人でも雇用する場合、労災保険の加入義務があります。
そのため、労働保険の適用事業者は労働保険関係成立届を雇用の翌日から10日以内に管轄の労働基準監督署に届けなければなりません。
労働保険概算保険料申告書
従業員を雇用したら、その年の賃金の総額の見込額に保険料率を乗じた概算の保険料を申告しなければなりません。
従業員を雇用した翌日から50日以内が提出期限です。
まずは保険関係成立届の提出が必要です。
その他、従業員を常時10人以上の雇用した場合は就業規則(変更)届、労働者を雇用した際には適用事業報告書を労働基準監督署に提出します。
ハローワークで必要な手続き
実際に従業員を雇用し、労働基準監督署での手続きを終えた後、今度はハローワーク(公共職業安定所)で雇用関係の書類を提出します。
1つは雇用保険の適用に必要な雇用保険 適用事業所設置届です。
同じく雇用保険に加入のための雇用保険 被保険者資格取得届の手続きも行います。
どちらも従業員を雇用した翌日から10日以内に提出しなければなりません。
登記事項証明書や労働者名簿などの雇用実態がわかる労働者名簿などの添付書類も必要です。
会社の最寄りのハローワークについては、次のリンク先から検索できます。
また電子申請も受け付けています。
60歳以上の従業員雇用の注意点
60歳以上65歳未満の従業員には、高年齢雇用継続給付金が支給されます。
支給条件は60歳到達時点とそれ以降の収入を比較し、60歳到達時点の75%未満となる場合です。
給付金の申請についても、ハローワークに申請書に提出が必要です。
会社を設立するまでにはさまざまな準備や申請、手続きを行わなければなりません。
ただ、会社を設立して完了ではなく、設立後にはさらに煩雑な手続きを実施していく必要があります。
まとめ
会社設立において必要な手続きの中でも税務、経理関係は複雑かつ専門的な知識が求められます。そのため、このような事務手続きはプロである税理士にあらかじめ依頼しておくことを推奨します。
わずらわしい手続きを一任することで、業務に集中でき、経営を軌道に乗せられるメリットは大きいです。
会社設立に関してどんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
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