会社設立後2年間は免税期間?インボイスはすぐに登録するべき?
2023年に開始されたインボイス制度。
インボイス発行事業者に登録しようかどうか迷われている個人事業主の方、起業家の方もいらっしゃるかと思います。
この記事ではこれから会社を設立しようと考えられている方のために、インボイス制度の内容やインボイス発行事業者になるメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
目次
法人化した後の2年間の免税期間とは
消費税とは商品の販売やサービスの提供に対してかかる税金です。
課税対象者は個人事業主や会社などの法人となり、たとえば年間で売上が1,000万円ある場合はその10%である100万円を消費税として国に納めなければなりません。
前述のとおり消費税は商品・サービスの提供時にかかる税金なので、一般的に事業者は消費者に商品やサービスを販売する際には、その価格に消費税分を上乗せして販売することになります。
このように消費税の課税対象となる事業者を課税事業者といいますが、その他に課税対象とはならない免税事業者という区分があります。
前前年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者は免税事業者となり、消費税を支払わなくてもよいということになるのです。
なお、基本的に会社を設立してから2年間は免税期間となります。
前述のとおり課税対象になるかどうかは前前年度の売上高で判断されるため、実績がない2年間は課税対象にならないということになるのです。
なお、個人事業主から法人化した場合、「新設法人の特例」が適用され、2年間は消費税の納税が免除されます。
会社を設立した場合、あるいは法人成りした場合は、この2年の間にしっかりと事業の基盤を作っておき、経理作業ができるような体制も構築しておく必要があります。
インボイス制度による免税事業者への影響
インボイス制度とは2023年10月から開始された、消費税の仕入税額控除に関する新しい制度です。
消費税の納税義務がある課税事業者は売上の10%を消費税として国に納めなければなりません。
一方で仕入れの際には仕入先に対しても10%の消費税を支払っているため、二重で消費税を払っていることになってしまいます。
そのため、課税事業者は消費税を納める場合、仕入れ時に支払った消費税額を控除できるようになっているのです。
これを仕入税控除といいます。
たとえば1年の売上が税込みで1,100万円、仕入れに550万円かかったとしましょう。
本来であれば100万円を消費税として納めなければなりませんが、すでに仕入先に消費税として50万円を支払っているので、国には50万円を納めればいいということになります。
これまでは請求書等の証憑書類があって仕入先や外注先などに消費税を支払っていることが証明できれば仕入税額控除が認められていました。
しかし、インボイス制度が導入された2023年10月以降はインボイス(適格請求書)がないと仕入税額控除を認めないというルールに変わったのです。
インボイスは適格請求書発行事業者のみが発行でき、適格請求書発行事業者になるためには課税事業者になる必要があります。
前章では会社を設立してから2年間は免税事業者となり消費税の支払い義務はない旨をご説明しましたが、だからといってインボイス制度の対象外とはなりません。
適格請求書発行事業者になってインボイスを発行しないとなると取引先にさまざまな影響を与え、それが回りまわってご自身のビジネスにも大きく響いてくる可能性があります。
詳しくは「免税事業者のままでいるメリット」「免税事業者のままでいるデメリット」の章で解説します。
会社設立後すぐにインボイス登録ができるのか
結論からいうと、開業直後からインボイス登録をして適格請求書発行事業者になることは可能です。
令和5年10月1日から令和11年9月30日の属する課税期間に免税事業者が会社設立直後から適格請求書発行事業者になる場合、設立事業年度中に登録申請書を税務署に提出します。
令和11年9月30日以降は登録申請書と消費税課税事業者選択届出書を提出する必要があります。
なお、課税期間の初日からインボイス登録を受けるためには、申請書の「事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする事業者」にチェックを入れ、「課税期間の初日」を記載する必要があります。
これによって会社を設立した日まで遡ってインボイスに登録したとみなされるようになります。
「課税期間の初日」には会社の設立年月日を記載する必要があるため、必然的に設立後に登録申請手続きを行うことになります。
なお、インボイスには国税庁が発行する登録番号を記載しなければならず、登録申請手続きから番号の通知までには期間がかかります。
その間は取引先にインボイス登録の申請中であることを伝えて登録番号が通知された後にインボイスを発行するか、暫定的に請求書を発行し登録番号が通知された後に改めてインボイスを発行するなどの対応が求められます。
課税事業者にならない(免税事業者のままでいる)メリット
インボイス登録をせず免税事業者のままでいるメリットとしてまず挙げられるのは、消費税を支払わなくてもよいという点です。
課税事業者は売上の10%ないしは8%を消費税として国に納めなければなりません。
特に開業直後は売上や利益が低く、設備投資や人材採用などにもお金がかかるため、消費税はかなりの負担になるはずです。
消費税が免除されれば、その分を事業の基盤を整えるための予算に使えるようになります。
会計処理が簡単であるのも免税事業者のままでいるメリットです。
課税事業者は消費税の申告手続きと納税手続きも行わなければなりません。
インボイスを発行する際にも、10%と8%を明確に区分し、それぞれの合計額を記載する必要があります。
やはり起業直後は人的なリソースも限られており、経営者自らが経理業務をしている会社も少なくありません。
会計処理の負担が軽ければ、リソースを本業に集中させることができます。
課税事業者にならない(免税事業者のままでいる)デメリット
免税事業者と取引をする場合、インボイスの発行が受けられません。
それはすなわち仕入税額控除が認められないということになってしまいます。
たとえば売上が税込み1,100万円で550万円分の仕入れをした場合、仕入先が課税事業者であれば消費税の納税額は50万円になりますが、仕入先が免税事業者の場合は100万円になってしまいます。
このように仕入税額控除が受けられないと仕入れる側は大きく損をしてしまうため、課税事業者のままでいると取引の対象から外されてしまう可能性があるのです。
特に代替が利く商品やサービスを納入している場合、インボイス登録をしている競合他社に切り替えられてしまうことも考えられます。
また、取引が打ち切られてしまうまでいかなくとも、値下げを要求されるケースも考えられます。
10%分もしくは8%値引きをする、あるいはかかった消費税分を値引きするよう求められる可能性もあります。
なお、取引先が免税事業者のみである場合、もしくはそもそも仕入税額控除が関係ない一般消費者向けのビジネスをされている場合は、影響はそれほどありません。
課税事業者になった方が良い?
課税事業者になるべきかどうかはケースバイケースです。
たとえば前章のように免税事業者や一般消費者との取引がメインであれば、あえてインボイス登録をする必要性はないかもしれません。
むしろ課税事業者になることで消費税の納税義務が課せられる、会計処理が複雑になるなどのデメリットのほうが大きくなる可能性があります。
一方で取引先が課税事業者となっている法人や個人事業主がメインである場合は、インボイス登録が必要になるかもしれません。
消費税の納税義務は生じますが、取引を打ち切られたり値引きを要求されたりしてかえって損をするリスクもあります。
課税事業者になるべきかどうかの判断は非常に難しいので、専門家に相談してみるのも手です。
会社設立のサポートや起業して間もない法人様の支援を得意としている佐野伸太郎税理士事務所では、事業者様のご状況に応じてアドバイスとサポートをさせていただいております。
この記事のまとめ
インボイス登録をするか否かで今後の利益率や業務負担が大きく変わってきます。
一概に登録すべきかどうかは断言できず、各々の事業者様のご状況に応じて判断する必要があります。
今回ご紹介したメリット・デメリットをしっかり踏まえた上でどうするか?を考えてみましょう。
判断に迷った場合は、ぜひ私たちにお気軽にご相談ください。
ビジネスの内容や財務状況、お取引先様のご状況などをしっかりとお伺いした上で、最良と思われる方法をご提案します。
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