株式会社と合同会社、メリット・デメリットについて解説!会社設立におすすめなのは?

掲載日:2024年05月24日(金)(更新日:2024年6月25日)

会社を設立する方法としては株式会社を新設するのが一般的ですが、それ以外にもいくつか手段があります。特に最近増えてきたのは「合同会社」という会社を設立するケースです。「●●合同会社」という社名を見たことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、いったい株式会社とどう違うのでしょうか?

今回はこれから会社を設立される方のために、株式会社と合同会社の違いや、それぞれのメリット・デメリット、どちらで設立したほうがいいのかについて解説します。

ご自身のご状況やビジネスに合わない会社形態を選んでしまうと、後から手続きが増えるなどして後悔することにもなりかねませんので、しっかりと今回の記事の内容を押さえておきましょう。

株式会社と合同会社の違い

合同会社とは2006年5月に改正会社法が施行された際に新設された会社形態です。そのため、株式会社と比較すると絶対数は少ないですが、それでも2022年には全体の3割を占めるまでになってきて、これからも合同会社の割合が増えてくると予想されます。

株式会社は株主がいて、それとは別に代表取締役(社長)がいるというように、出資者と経営者が異なる場合が多いです。会社の経営に関わる意思決定は株主総会で行われます。

一方で合同会社の場合は出資者と会社の経営者が一致しており、経営に関する意思決定は総社員の同意によって行われます。なお、株式会社では雇用契約を結んでいる従業員のことを社員と呼びますが、合同会社において社員は出資者・経営者のことを指し、代表者のことを「代表社員」と呼びます。

他にも株式会社と合同会社にはさまざまな違いがあります。以下の表をご参考ください。

株式会社 合同会社
意思決定 株主総会 総社員の同意
所有と経営 原則完全分離 原則同一
出資者責任 間接有限責任 間接有限責任
役員の任期 最長10年 任期なし
代表者の名称 代表取締役 代表社員
決算公告 必要 不要
定款 認証必要 認証不要
利益配分 出資比率に応じる 定款で自由に規定
設立費用 約200,000円〜 約100,000円〜

引用|会社設立の基礎知識:クラウド会計ソフト freee会計

株式会社と合同会社のメリット・デメリットを解説

株式会社、合同会社にはそれぞれ経営上のメリット・デメリットがあり、起業する際、新たに会社を設立する際にはそれらを考慮する必要があります。以下の表で簡単にまとめました。

メリット デメリット
株式会社
  • 知名度が高い
  • 資金調達がしやすい
  • 設立費用やイニシャルコストが高い
  • 出資額に応じて利益配分が決まる
  • 決算公告が必要
合同会社
  • 設立費用が抑えられる
  • 利益配分を自由に決定できる
  • 決算公告の義務がない
  • 知名度が低い
  • 資金調達方法が限られている

いずれの会社形態においてもそれぞれいい点と悪い点があります。以下で詳しく見ていきましょう。

株式会社のメリット

まず株式会社のメリットと言えばなんといっても知名度が高い点です。合同会社の軒数も増えてきてはいますが、大企業や有名企業をはじめ世の中の大多数の会社は株式会社です。法人としても、経営者個人としても、やはり合同会社よりも株式会社のほうが相手にしっかりとした会社であることが認識されやすく、信用が高まります。企業のなかには株式会社であることを取引の条件としている場合もあり、株式会社を設立すればそういった会社とも取引が可能となります。

資金調達がしやすいというのも株式会社のメリットです。株式を発行することで投資家から資金を調達できるほか、銀行融資についても株式会社のほうが有利な場合があります。起業に際して資金を調達する必要がある場合、あるいは会社の規模を拡大させていきたい場合は、株式会社を選択されたほうがいいケースもあります。

株式会社のデメリット

株式会社のデメリットとしてまず挙げられるのが設立に必要な費用やイニシャルコストなどが高くなるという点です。株式会社を設立するためには会社登記時に支払う登録免許税や定款の謄本手数料、公証人の手数料、印紙代などの費用が発生し、概ね20万円ほど必要です。手続きも煩雑で手間がかかり、司法書士に依頼した場合は報酬も支払わなければなりません。さらに、株式会社の役員の任期は最長10年で、そのたびに登録免許税を支払う必要があります。他にも本店を移転する際など、変更登記を行うたびに費用が発生します。

出資額に応じて利益配分が決まってしまうという点にも注意が必要です。いくら会社に貢献した出資者がいたとしても、出資額が少なければその出資者が受け取る利益も少なくなってしまいます

また、株式会社は決算時に官報などで決算公告をしなければならない点もネックです。官報で決算公告を行う場合、毎年7万5,000円支払わなければなりません。また、決算公告に係る業務の手間がかかります。

合同会社のメリット

合同会社のメリットとしてはまず株式会社よりも設立費用が抑えられることが挙げられます。前述のとおり、株式会社を設立するためにはさまざまな手続きがあり、総額で20万円ほどかかってしまいます。合同会社は定款の認証手数料が不要で、登録免許税や印紙代などで費用は10万円ほどと株式会社の半分で済みます

意思決定のスピードが早いというのも合同会社のメリットです。株式会社は出資者と経営者が別であることが多く、意見が分かれてしまうケースも少なくありません。合同会社は会社の所有者と経営者が一致しているため、スピード感があって柔軟な経営がしやすいです。また、利益配分が自由に決定できるため、会社への貢献度によって社員の利益を決められるなど、柔軟な利益配分ができます

決算公告の義務がなく、役員の任期が決められていないのも合同会社の利点といえます。前述のとおり、株式会社であれば毎年決算公告を行わなければならず、そのたびに費用と手間がかかります。役員の任期も10年と決められており、変更登記のたびに登録免許税を支払わなければなりません。合同会社であれば決算公告や役員変更に伴う費用を抑えることが可能です

合同会社のデメリット

合同会社のデメリットとしては知名度が低いことが挙げられます。もちろん合同会社もれっきとした会社であり、まじめにビジネスをされている会社がほとんどです。しかし、新設された会社形態であるがゆえにあまり世間では認知されていません。「合同会社」と聞いて「はじめて聞いた」「怪しい」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。社会的なイメージはやはり株式会社のほうが上というのが実情です

出資者同士が対立すると意思決定が困難になってしまうというのも合同会社のデメリットです。合同会社では出資者と経営者が一致しているため意思決定が早い傾向があるという側面もあるのですが、仮に複数人で出資・経営していて揉めてしまった場合、むしろ意思決定が遅れてしまいビジネスが滞ってしまうこともあり得ます

資金調達の方法が限られてしまうという点もデメリットといえます。株式会社の場合は株式を発行することで出資を募ることが可能です。また、社会的な信用もあるため融資も受けやすいです。合同会社では株式の発行はできず、融資を受けるのも株式会社と比較すると難しい面があります

会社設立には株式会社と合同会社どちらが良い?

株式会社と合同会社、どちらがいいかは事業の内容や規模、今後の展望によって判断されることをおすすめします。

たとえば将来的に上場する、設備投資や資材、商材の仕入れ、人を雇用するなどビジネスの規模が大きくなる見込みであれば株式が発行できる株式会社を設立したほうがいいかもしれません。また、大企業を中心に株式会社であることを取引条件として設定している企業も少なくありません。BtoBのビジネスを行う場合、社会的信用を考えて株式会社を設立されることをおすすめします

一方、節税目的で会社を設立する、一人もしくは家族経営など少人数で経営を続けて会社を大きくする予定がない、自由に経営をしていきたいということであれば、設立費用が抑えられて制約が少ない合同会社を設立したほうがいい場合もあります。

以上はあくまで一例です。どちらにすべきかは一概にはいえず、ケースバイケースです。それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、ご自身やビジネスの状況、将来の見通しも考え、専門家にもアドバイスを貰いながら、総合的に判断することが大切です。

合同会社から株式会社に変更できる?

一旦は合同会社を設立したものの、上場を目指すことになった、事業の規模が大きくなってきた、資金調達をする必要が出てきたなどの理由で株式会社に変更したいと思われる方もいらっしゃるかと思います。結論から言えば合同会社を株式会社に変更することは可能です。

組織変更計画書を作成して社員(出資者)の同意を得た上で、債権者保護手続と組織変更登記を行うことで、合同会社を株式会社に改変することができます

変更手続きに要する期間はおおむね40日~2ヶ月です。合同会社解散登記費用、株式会社設立費用、官報への掲載費用などで、総額10万円ほど必要となります。

やりようによっては最初から株式会社を設立してしまうよりは、費用負担を抑えることも可能です。しかし、合同会社の設立で登記手続きなどを行い、株式会社に再編する際にまた登記をしなければならないなど、手間がかかります。また、合同会社を選択してしまったがために株式会社ならできるはずの取引や資金調達ができないなどの損失が発生する場合もあります。

後悔をしないためにも、会社設立時にしっかりと熟考することが大切です。

まとめ

株式会社で会社を設立する、合同会社で会社を設立する。それぞれにメリット・デメリットがあります。

「最初は合同会社でいい」と思って合同会社を設立したはいいものの、事業の規模が大きくなってきて株式会社に再編を迫られることもあり得るかもしれません。逆に株式会社を設立したものの費用ばかりがかかって期待したメリットが得られなかったり自由に経営ができなくなってしまったりして後悔してしまうというケースもあります。

後から変更ができないわけではありませんが、手間と費用がかかってしまいます。可能であれば会社設立前に今回の記事でご紹介したような内容も踏まえてしっかりと考えてみましょう

また、ご自身だけでは結論が出ない場合もあります。会社形態の選択は経営や法律、会計、税務の知識がないとなかなか難しいです。税理士などの専門家に相談して客観的な視点でアドバイスを貰いながら判断されることをおすすめします

佐野伸太郎税理士事務所でも創業に関するサポートを行っております。今回のテーマのような会社形態の選択も含め、起業や会社設立に関するアドバイスをさせていただきますので、お悩みの方はぜひご相談ください。


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代表税理士の佐野伸太郎です。
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