年末調整の流れ

掲載日:2016年11月24日(木)(更新日:2019年11月28日)

目次

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経理担当者にとって大切な年中行事といえるのが年末調整。毎年、年末が近づいてくると気が重くなる…という方もいらっしゃるかもしれません。
特に初めての年末調整を行う会社の社長様・ご担当者様にとっては不安が大きいのではないでしょうか。そこで、年末調整の概要、および流れについてまとめてみました。ぜひ、参考にしていただきたいと思います。

年末調整とは

年末調整は、従業員の1年間の給与(役員報酬含む)に対してかかる税金を精算するための作業のことです。サラリーマンの場合、毎月給料からは雇用保険料(役員を除く)、厚生年金保険料、健康保険料、そして源泉所得税、住民税などが天引きされていますが、この中で「源泉所得税」のみ年末調整で過不足が精算されることになっています。

毎月徴収されている源泉所得税はおおよその金額であり、正確なものではないため、年末に一度1年間に支払った所得税を正確に計算し直し、帳尻を合わせる作業が必要となるのです。

少なければ追加で支払い、多く徴収されている場合は返金されるわけですが、基本的には返金されるケースの方が多くなります。師走の時期に年末調整で多めに徴収されてしまうと困る人がいることを想定し、還付されるような仕組みとなっているのです。また、生命保険などに入っている場合は所得税の控除の対象となるため、再計算することでお金が戻ってくることになります。

なお、年末調整の対象となる人は以下の方です。

12月に行う年末調整の対象となる人

  • ・1年間通して勤務した人
  • ・中途採用で入社した後、年末まで務めた人
     ※1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人等は
      確定申告が必要となる為、除外されます

年の中途で行う年末調整の対象となる人

  • ・死亡したことにより中途退社となった人
  • ・著しい心身の障害が原因で退職し、さらにその年に復職が望めない人
  • ・パートタイマーなどの退職者でその年の給与総額103万円以下、
     かつその年において他社から給与の支払いを受ける見込みのない人

年末調整の対象とならない人

年末調整の対象は、基本的には「会社に雇用されている」人です。
ただし以下の条件に当てはまる場合には対象から外れますので注意が必要です。

  • ・1ヶ所の給与収入が年間2,000万円を超えている人
  • ・災害等の被災者で本年分の源泉所得税などの納税猶予や還付を受けている人
  • ・2ヶ所以上で働いて給与の支払いを受けており、他の勤務先に扶養控除等(異動)申告書を提出している人
  • ・年末調整をおこなうまでに扶養控除等(異動)申告書を提出していない人
  • ・年の途中で退職及び死亡した人
  • ・年の途中で退職し、転職した先で年末調整をする人
  • ・非居住者(海外の支店などに1年以上転勤となっている人など)
  • ・継続して同一の雇用主から雇用されていない日雇い労働者など(日額表の丙欄適用者)

令和2年に執行される税制改正とは

令和2年に税制改正がおこなわれ、2つ大きな変更があります。

1.源泉徴収税額表の改正

給与所得と賞与に関する源泉徴収が変更となります。
令和2年1月1日以降の給与に関する源泉徴収額に関しては「令和2年分源泉徴収税額表」を使用する必要があります。

2.「扶養控除等(異動)申告書」の「住民税に関する事項」の変更

「単身児童扶養者」の欄が追加されるため、様式が変更となります。


さらに令和2年分から源泉所得税に関し以下の改正がおこなわれます。

給与所得控除の改正

給与所得控除額が10万円引き下げられます。
控除の条件となる給与等の収入金額の上限が年収850万円(現行1,000円)、給与所得控除の上限は195万円(現行220万円)に変更となります。

基礎控除の改正

一律38万円で控除されていた基礎控除が、最大48万円となります。(合計所得金額2,400万円以下の場合)2,500万円を超えると基礎控除の適用はされません。

合計所得金額 基礎控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円以上2,450万円以下 32万円
2,450万円以上2,500万円以下 16万円
2,500万円以上 適用なし

所得金額調整控除の創設

年収が850万円を超え、かつ「本人が特別障害者」「23歳未満の扶養親族を有する」「特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養家族を有する」いずれかの条件に該当する従業員は収入金額から850万円を控除した金額の10%に相当する金額を控除します。なお、収入金額が1,000万円を超える場合は一律1,000万円が控除額です。

各種所得控除を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の改正

配偶者特別控除の対象となる配偶者及び勤労学生の合計所得金額要件が各10万円引き上げられます。同一生計配偶者、扶養親族は48万円以下、源泉控除対象配偶者は95万円以下、配偶者特別控除の対象となる配偶者は48万円超133万円以下、勤労学生は75万円以下となります。

「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」の新設等

改正に伴い、「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」を給与の支払者に新たに提出することになります。

住宅借入金等特別控除の改正

住宅の取得をし、令和元年10月1日から令和2年12月31日までに居住した場合、所得税額の特別控除の控除期間が改正前の10年から13年間に改正されます。

【税制改正による年末調整業務への影響】

  • 申告書の内容が増えるためチェックする負担が増加する
  • 3つの申告書が1枚になるため個別に記入に関する相談を受ける可能性がある
  • 記入漏れや書き間違いの可能性もあるため前年度の申告書も参考に対象者を分けておく必要がある
  • 再提出してもらう可能性が大きいため早めに業務に取りかかる必要がある

年末調整に必要な各書類を集める

各必要書類を集める

年末調整では、従業員に以下の4つの書類を記入した上で提出してもらう必要があります。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

本人が扶養している家族についての情報を記入する書類です。扶養している全員の氏名とマイナンバーの記入、居住地などを記入します。扶養する家族がいない場合にも記入が必要です。またアルバイトやパート、派遣でも主な給与先であれば提出しなければなりません。

給与所得者の配偶者控除等申告書

本人に配偶者がおり、配偶者に所得がある場合には、扶養控除等(異動)申告書とは別に、配偶者控除等申告書を提出することで配偶者控除、もしくは配偶者特別控除を受けられます。配偶者の氏名や生年月日、マイナンバー、所得情報を記載します。さらに所得を証明する書類もあわせて提出の必要があります。

給与所得者の保険料控除申告書

本人が支払っており、かつ年末調整をおこなう事業所の給与から控除されていない保険料を控除するための申告書です。一般生命保険、国民年金保険料、介護医療保険や個人年金保険のほか、地震保険の掛け金などを申告するための書類です。保険会社から払い込みを証明する書類が届きますので、書類に添付する必要があります。

住宅借入金等特別控除申告書

個人が住宅ローンを利用して新築、取得、取得等(増改築やリフォーム)をし居住を前年以前に開始している従業員が対象です。特別控除の初年(居住開始して最初の年末調整時)は従業員本人が確定申告をする必要があるため、その次の年末調整時に記入して提出してもらいます。「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」(初年の控除申告後に税務署から控除年数分送付される書類)と、住宅ローンを借りている金融機関から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」の2つの添付が必要です。

年末調整の計算

①給与総支給額を集計

給料の総支給額(賞与含む)、給与から徴収済みの所得税額、および社会保険料などを集計します。

②給与所得控除後の給与(所得金額)について計算

給与所得者本人の給与から、控除される金額を計算する必要があります。まず「給与所得者の保険料控除申告書」については、支払った保険料等をすべて記入する必要があります。一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料に記入し、合計額を記入します。生命保険料の控除額は最高で12万円までです。地震保険料は生命保険料とは別に最高50,000円まで控除されます。配偶者に収入がある場合には「給与所得者の配偶者控除等申告書」に記入し、こちらも控除の対象となります。平成30年度から配偶者控除、配偶者特別控除、どちらの対象者も提出が必要となっています。こちらも控除額が書類上で計算できますので、給与総支給額から差し引いて所得金額を出します。

③所得税額等を計算(確定年税額)

②の金額に、所得税の税率をかけて所得税額を算出します(住宅借入金等特別控除がある場合は、申告書で計算した控除額を差し引きます)。

④源泉徴収簿を作成

①で計算した毎月の金額、および②や③で計算した控除額、所得税額などを、源泉徴収簿に記載します。

⑤実際に天引きした源泉所得税との過不足を計算

実際に徴収した税額と確定年税額との差額分について算出します。

源泉徴収票の作成

計算した数字をもとに源泉徴収票を作成し、従業員に配布します。

過不足の精算と源泉税の納付

実際に徴収した税額と確定年税額との差額分について還付、もしくは徴収を行います。

納付書を作成し所得税を国に納付

毎月支払っている会社の場合は12月分を、7月~12月分で納付する会社の場合は該当分の納付書を作成します。所得税は、納付期限である1月10日(特例適用の場合は20日)までに、国に納付します。

給与支払報告書を市区町村に提出

翌年1月末日までに、給与所得者それぞれの市区町村あてに、給与支払報告書(源泉徴収票の複写)を提出します。市区町村ごとに総括表をつける必要があります。

法定調書(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票)を税務所に提出

翌年1月末日までに、税務署あてに法定調書を提出します(社員の源泉徴収票を添付)。これは、給与年額、所得税額、不動産の賃貸借などについて報告するものです。

佐野伸太郎税理士事務所の年末調整サービス

佐野伸太郎税理士事務所では、以下のような年末調整に関するサービスをご提供しております。

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  • •従業員様向けの案内文書の作成・編集
  • •回収済み申告書の内容および添付証明書のチェック
  • •不備・未回収申告書のリストアップ
  • •年末調整控除データの作成
  • •年税額の計算および12月最終給与への過不足税額転記
  • •源泉徴収票の発行
  • •法定調書合計表資料の作成
  • •給与支払報告書の作成・市区町村役所への発送
  • ※その他についてはご相談ください。

当事務所では、杉並区、阿佐ヶ谷で年末調整などの業務でお困りの企業様に対し、
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