法人化(法人成り)の相談は誰にする?会社設立における専門家選びのポイント

掲載日:2026年01月09日(金)(更新日:2026年2月16日)

この記事では、個人事業主が株式会社や合同会社といった企業体に組織変更する「法人化(法人成り)」を取り上げます。
法人化を考え始めた方からの相談によくある「相談先の使い分け」「法人化の目安」「手続きの流れ」等について、税の専門家の視点で分かりやすくご説明します。
「そろそろ法人化すべき?」「法人化は手続きが難しそう」「誰に相談すれば損しない?」といった疑問をお持ちの個人事業主の方は、ぜひお読みください。

この記事の要点

  • 法人化の目安:所得600~800万円あたりで検討する方が多い傾向
  • 相談先:まずは節税シミュレーションができる税理士が最優先
  • 専門家の使い分け:税理士のほか、登記は司法書士、許認可は行政書士など目的に応じて選ぶ
  • 法人化は相談+依頼が賢明:法人化は「自分で」より専門家に依頼するほうが、印紙代カットや時間短縮で結果的に得をするケースが多い

目次

法人化の目安は?判断基準となる年収・コスト

法人化の目安は?判断基準となる年収・コスト個人事業主として事業が軌道に乗ると「法人化(法人成り)」が現実味を帯びてくるでしょう。
実際に会社を設立し、企業として活動できるまでには1〜2ヶ月かかります。
法人化を考え始めたら、早めの相談・準備が肝心です。社会的信用の向上や節税効果、事業承継のしやすさなどの利点が見込まれる反面、複雑な手続きやコストも伴います。
「いつ、誰に相談すべきか」を正しく判断することが、成功への近道といえるでしょう。

年収(所得)の目安: 一般的に所得600万〜800万円が分岐点と言われる理由

法人化の年収(所得)として、600万から800万円が目安と聞いたことのある方は多いかと思います。これには2つの理由があります。

  • ・所得税と法人税の差:個人の所得税は累進課税で最大45%まで上がりますが、法人税は税率が概ね30%~34%となります。
  • ・消費税の免税: 資本金1,000万円未満で設立すれば最大2年間、消費税の納税が免除される可能性があります。
    ※インボイス登録の有無・特定期間・資本金・グループ関係等で課税事業者となる例外もあります。

このほかにも、法人は給与の取り扱いや赤字の繰越など、個人事業との扱いが異なる制度上の利点が多々あります

600万から800万円程度のまとまった所得(利益)が見込まれるなら、法人化のメリットを享受できるといえるでしょう。
個人事業主の法人化(法人成り)については弊サイト内記事「【法人化の手続き】個人事業主の法人成り、準備から完了まで詳しく解説!」でも、くわしく解説しています。

必要なコスト: 設立費用(法定費用)とランニングコストの比較

法人を設立する場合、株式会社で約20万円〜25万円、合同会社では約6万円〜10万円の費用(定款費用や登記費用、資本金など)がかかります。設立後のランニングコストとしては、

  • 法人住民税の均等割: 赤字であっても毎年最低約7万円の支払い義務が生じる
  • 社会保険料: 会社と折半で負担するため、個人事業の時より負担が増えるケースも
  • 事務負担: 複式簿記による記帳や決算申告が複雑に(税理士に依頼すれば報酬が発生)

の3つを心づもりしておく必要があります。

法人化の相談は誰にすべき?5つの専門家を比較

法人化の相談は誰にすべき?5つの専門家を比較法人成りに伴い、さまざまな手続きが発生します。
自分で手続きを行うか、専門家へ代行依頼をするか・・・費用や作業量などを考えて、迷ってしまう方も多いと思います。
そうした場面では専門家に作業を代行してもらうことで、時間的・金銭的コストを減らせる状況も少なくありません。
それぞれの専門家に依頼するケースを解説します。

税理士: 節税シミュレーション、役員報酬の決定、設立後の顧問。(※最も推奨される相談先)

税理士は、法人化の最大のメリットともいえる「節税」について、具体的なシミュレーションができる専門家です。会社設立時には税務に関わる届出書の作成・提出も依頼でき、設立にかかる時間・費用を最小限にし、本業にリソースを集中させられます。
会社設立後も継続的な税務サポートは不可欠なため、はじめの一歩的な窓口として最適です。
税務や決算、会計など、お金に関する業務は会社運営に大きく関わってきます。会社設立後の税金や会計、確定申告などについても、税理士から経営アドバイスをしてもらうと安心です。

司法書士: 登記手続きの代行、定款作成のプロ

司法書士は会社設立時、法務局への「設立登記」申請を代理で行える資格者で、定款(会社のルール)の作成や役員構成などの法務的アドバイスに長けた専門家です。
登記申請にかかわる書類作成や提出代行は基本、司法書士だけに許された独占業務となっています。
登記手続きや定款作成の相談は、司法書士が好適といえるでしょう。

行政書士: 特定の事業に必要な「許認可(建設業、飲食業等)」の申請

行政書士は建設業、飲食業、中古品売買(古物商)など、事業を始めるために行政の許可が必要な場合、その手続きを代行してくれます。
法人化に伴って許可の引き継ぎが必要な場合などは、行政書士に相談するといいでしょう。

社会保険労務士: 従業員雇用、社会保険手続き、助成金の相談

法人化すると、社長一人の会社でも社会保険への加入が義務付けられます。
社会保険の加入申請手続きや助成金の申請代理、就業規則の作成などといった相談には、社会保険労務士が最適といえます。
従業員を雇う予定がある場合にも、力になってくれる専門家です。

弁護士: 複雑な株主間契約やリーガルリスクの相談

弁護士は共同経営や合併等による会社設立で出資比率が複雑な場合や、特許・知的財産が絡む事業、契約上の紛争リスクがある場合の法人化で、相談したい専門家です。

  • ・定款作成・認証
  • ・法人設立登記代行
  • ・許認可申請

といったことも依頼できますが、一般的に他の士業より依頼料が高額です。
会社設立前の法律相談や、設立後の法的リスクを確認したいときなどにも心強いでしょう。

法人化の相談先として5つの士業を整理・比較

ここまでご紹介した5つの士業(税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士・弁護士)を「法人化にあたっての依頼・相談先」という視点で比較すると、下図のようになります。

専門家 主な役割・強み 具体的な相談・依頼内容 依頼するメリット
税理士 お金と税金の戦略 節税シミュレーション、役員報酬の決定、設立後の税務顧問 適切な税務設計ができ、長期的な経営パートナーになる
司法書士 登記手続きの代行 法務局への設立登記申請、定款作成の法務チェック 登記の独占業務資格者であり、法的整合性の高い会社設立ができる
行政書士 営業許可の取得 建設業、飲食業、古物商などの許認可申請・引継ぎ 事業開始に必要な「免許」の手続きをスムーズに代行してもらえる
社会保険労務士 雇用と保険のプロ 社会保険の加入手続き、助成金の申請、就業規則作成 従業員採用や、法人義務となる社会保険周りのリスクを回避できる
弁護士 法的リスクの回避 複雑な株主契約、知的財産権の保護、紛争防止 共同経営や特殊な事業形態での法的トラブルを未然に防げる

本記事でおすすめするのは税理士への相談です。ご自身のニーズと照らし合わせて、ベストな相談先を見つけてくださいね

自力 vs 専門家、どちらが得?

自力 vs 専門家、どちらが得?専門家の力を借りずに、自力での法人化も不可能ではありません。
全くの自力で会社を作る場合と、専門家に相談・依頼した場合のコストについて、この章では比較してみましょう。

自分で法人化手続きをする場合: 費用は抑えられるが書類不備やタイムロスのリスクがある

会社設立をするとき、自分自身で手続きをした方が安上がりなのでは?と考える向きもあると思います。
しかし、会社設立にはさまざまなステップを経る必要があります。慣れない書類作成などに時間・手間を取られれば、膨大な時間がかかって本業に影響するリスクも出てくるでしょう。
近年は、クラウドツール等を利用しながら自力で法人化する方もいらっしゃいますし「利益はこれから、とにかく1円でもコストを安く」といったケースには、自力での法人化もアリといえば、アリかもしれません。

専門家に依頼する場合: 代行手数料はかかるが、本業に集中できるメリットがある

法人化に際して、相談や実務などに力を貸してくれる専門家には費用を惜しまないほうが、スムーズなケースが大半です。正確な書類を作れるだけでなく、届出漏れの防止にもなります。
法人化に必要な手続きや書類作成・提出などを専門家に任せれば、開業時の大事な時間を多く確保しやすいでしょう。
個人事業主として利益が出ていて、その延長線上に法人化を検討している方は、専門家に依頼する前提での準備をおすすめします

■図:自力での法人化と専門家に依頼した法人化の費用比較例

項目 自力(紙定款) 自力(クラウドツール) 司法書士
定款認証手数料 約50,000円 約50,000円 約50,000円
定款の印紙代 40,000円 0円 0円
登録免許税 150,000円 150,000円 150,000円
専門家報酬 0円 0円~5,000円 0円~100,000円※
合計(概算) 約240,000円 約200,000円 約200,000円~

※税理士事務所を経由して依頼(実際の対応は司法書士など)する場合、税務顧問契約を前提に設立手数料を実費相当(設立手数料0円)にする事務所もあります。
その場合、結果として総額が同程度になることもあります。

自力ではもちろんのこと、専門家に依頼してもやはり、法人化は大きなイベントです。会社設立後もさまざまな作業が待っています。設立に際しての手続きや決まりごとなどについて、

の記事にまとめています。これらも参考にしていただければ幸いです。

失敗しないための相談先選びのポイント

失敗しないための相談先選びのポイント専門家に相談し、個人事業主から法人成りするとき。失敗しないためにはやはり、相談先を厳選する必要があります。
相談先がまだ決まっていない場合にどんなポイントに注意して選定すればいいかをご説明します。

法人化の実績が豊富か: 法人成り特有の税務に強いか

法人化の相談先を選定するとき、まずおさえたいポイントとして「法人化をサポートした実績が豊富なこと」が挙げられます。
公式サイトなどで、法人化の相談実績が豊富かどうかをまず確認しましょう。
さらに、法人化を検討している個人事業主向けのプランなどを用意している士業事務所であればベストです。

他業種との連携があるか: 司法書士や社労士とチームを組んでいる窓口がベスト

士業はそれぞれ専門とする業務範囲が分かれており、法人化したいお客様を受け入れる際などはチームを組んで仕事を進めるケースが一般的です。
そうした分業体制について、公式サイトなどで分かりやすく説明しているところに頼むと安心です。
不明な点が残る場合は、依頼前の相談時によく話を聞くようにしましょう。

レスポンスの早さと相性: 長い付き合いになるため、コミュニケーションの円滑さは必須

法人化を考え始めたとき、何度かの相談を通して「すぐ返答がある」「相性がいい」というのも外せない条件といえます。
友人知人のつながりから信頼のおける相談先を探せれば心強いですが、難しいケースもあるでしょう。
いくつか候補先をしぼり、顧客との具体的なやり取りなどが公開されていて、いちばん信頼できそうな事務所を探してみてはいかがでしょうか

よくある質問(Q&A)

よくある質問(Q&A)法人化の相談を受けるとき、お客様からさまざまなご質問をいただきます。
今回はたくさんのご質問のなかから、特によくいただくものを厳選して3つご紹介します。

Q:無料で相談できる窓口はある?

あります。 商工会議所、日本政策金融公庫の創業支援デスク、各自治体の創業支援センターといった公的機関で無料相談が可能です。
ただし、具体的な登記書類の作成や個別の税務申告代行はしてくれません。一般的な知識を得る場所として活用しましょう

Q:赤字でも法人化したほうがいい?

赤字での法人化は、一般的には負担増になりやすいと言われています。個人事業主として600万円程度の所得(利益)を目安に、法人化を目指しましょう
ただ、将来的な事業拡大・資金調達・取引先要請など、法人格が必要な理由があるなど、赤字でも法人化したほうがいいケースもあります。

Q:資本金は1円でも本当に大丈夫?

2006年(平成18年)の法改正により、それまで必要だった「株式会社1,000万円、有限会社300万円」という最低資本金制度が撤廃され、特定の事業・状況を除き法律上は資本金1円でも株式会社や合同会社を設立できます
ただ「法的に可能」ではあるものの、実際に法人を運営していくにはやはり、まとまった額の資本金は必要と考えるほうが妥当でしょう。
法人設立時の資金については「会社設立の際の資金調達の方法は? 」も参考になります。

まとめ

今回は「法人化の相談」というテーマで、税理士の視点からお話をさせていただきました。
法人化は単なる「手続き」ではなく、事業を大きく飛躍させるための「経営戦略」です。 所得(利益)が600万円を超えてきた個人事業主の方は、佐野伸太郎税理士事務所にぜひ一度、ご相談ください。
相談パートナーとして寄り添い、成功への第一歩をお手伝いさせていただきます。

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佐野伸太郎

監修者
代表税理士:佐野伸太郎

2016年4月に阿佐ヶ谷で独立開業。中小企業や個人事情主を中心に、税務顧問、法人設立支援、資金繰り・融資相談、各種税務申告業務を展開している。税務だけにとどまらず、経営判断に必要な数値管理や事業計画のサポートなど、経営者に寄りそったはん併走型支援を強みとしている。

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代表税理士の佐野伸太郎です。
宜しくお願いいたします。
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